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良薬くちにアメル

酸いより甘いより苦味が強い、日々の記録を残していきます

下戸徒然

「お酒を飲めない」という話をしているとき「どのくらい飲めないの?」と執拗に聞かれたことがある。

そんなことを聞かれたのは初めてだったので、なんだか妙にまごついてしまった。「缶ビール1本飲んだら確実に寝ちゃいますね」とか、そんなような返事を期待されているのは通じるのだが、そのときの私は「だからお店に行ってもお酒頼まないんだってば!それとも体質のことがそんなに詳しく知りたいわけ!?いやいや絶対飲めない人のことがわかってないだけだわ。お酒が飲める人目線の質問、めんどくさいな〜」と感じた。

私は19歳のときから睡眠導入剤などの薬を服用し、現在まで服用を続けている。薬のバラエティは当時と変わっているものの、アルコールと相性の悪い薬ばかり飲んでいることに違いはない。そのせいもあってお酒にはめっぽう弱い、はずだ。実は、自分がどの程度の下戸であるのか、30歳を過ぎた今でも正確には把握できていない。そんなレアケースにまで気を遣えと言うつもりはないが、ともあれ件の質問は、どうやら「あまり飲める体質でない人」である私が「飲まない」という選択で長らく自衛をしてきたようだ、と気が付くきっかけとなった。

 

はたちそこそこの頃に、酎ハイやカクテルを飲んだ経験は確かにある。しかしいつからか一切アルコールに手をつけなくなった。具合が悪くなったり、夜に寝付けなくなったり、そもそもたいしておいしいものでもないじゃないかと思ったり。「飲んでもあまり良いことがないようだ」という結論に至ってしまった。あるとき急に気が付いたというよりは、だんだんとアルコールと付き合うのが面倒になってブロックした、というイメージが近い。

たいして好きなものではないから、どれくらいまでなら飲めるのか、どれくらいから頭が痛み出すのか、なんて試したことはない。おまけに私の場合は薬の量が増えたり減ったりするから、アルコールへの耐性も都度変わっているだろう。

仮に薬などとはとんと縁がなく、生まれついての下戸だったとしても、あまり変わらないのではないか、と思う。

「そりゃアナフィラキシーショックは起こさないけど…」

アルコールとは、どこかが痛くなったり苦しくなったりするかもしれない毒なのだ。少なくとも私は、わざわざたくさん飲んでみようとは思わない。

「具合悪くなるの怖いから、試したことありません」と、あのときも確か答えた。苦し紛れに絞り出したにしてはかなり正直なアンサーだったと思うのだが、質問の主はなんだか腑に落ちない顔をしていた。

 

確かに、私は少し慎重すぎるかもしれない。多くの大人はたまに羽目を外してお酒を飲んで、失敗して学習し、またたまに失敗するものなのだ、と言われれば、まぁそうかも、と思う。「自分は熱燗を一合飲んで酩酊し、上司の膝の上にゲロを吐きました。ワッハッハ!」みたいな武勇伝のひとつやふたつ、嗜みとして持っておくべきなのかも。

とはいえやはり、お酒なんかのためにリスクを負うほどお酒を愛していないし、おいしいと思っていないから大量に飲むこともできないのだけれど。

 

ちなみに、アルコール自衛術は、案外地方都市では通用する。この辺りは車社会なので、多くの場合、好き嫌いに関わらず「飲まない」という選択肢が市民権を得ているのだ。

しかし電車での移動が当たり前の都心であったら、もしかして「一滴も飲めないわけじゃないんでしょう?飲めるだけ飲みなさい、乾杯だけでもいいから」などと言われるのが普通なのだろうか。それならば確かに自分がどれほどのアルコールを飲めるか、自己申告のための設定が必要だ。

 

あぁ、もしかしてあのとき、私はその設定のことを聞かれていたのかな。

いや、わかんないけど。

 

立場、体質、出身、職業、性別などなど。自分以外のもののことは、本当にいつまでもわからないものだな、と、何を考えてもだいたいそんな感想に至って終わる。