婚活で出会ったライブラのはなし
今年の1月頃、私にとって婚活パーティーはまだ暇つぶしのようなものだった。開催直前ともなると女性の参加費は500円ほどなので、あるときなんとなく足を運んでみたのだ。
街コンと違い、半個室で男性と1対1で対話するスタイルだった。私はそこで出会った男性と4ヶ月ほど交際した。交際というか、相性を確かめるために何度か出かけた、と書いたほうが正しい。
彼(天秤座なのでライブラと呼ぶ)は穏やかな性格が魅力的な人で、ライブラの性格に文句をつけることだけは最後までなかった。あまりに優しく性格が良いので「もう会いたくない、会っても好きになることはない」と自分に言い聞かせるのが困難だったことを覚えている。
なぜ好きになれなかったかというと、ざっくり言ってしまえば相性の問題だ。何度会っても異性としての気持ち悪さが拭いきれなかったし、手を握るのが嫌だった。
それでも、ライブラほど人格が魅力的な男性には出会ったことがなかったので、4ヶ月間ずっと迷っていたように思う。
あるとき、東京へ行く長距離バスの中で、ひとり暇を持て余した私はメモ帳を取り出して「好きなところシート」を作った。
・顔
・身体的特徴
・性格
・将来性
・財力
・楽しい
・清潔感とエチケット
といった具合に、項目を12ほど上げていく。ライブラが◯だったのは性格ただ1点。他はすべて△か×だった。
好きなところが2個以上ないと「とっても好き」にはなれないのかもしれない。×だらけの好きなところシートを何度も見返して、あと1つでも◯があればなぁ、と見るたびに思った。
また、このシートを作った際に、私は一緒にいて落ち着くタイプよりも、冗談を言い合えて会話を楽しめるタイプを求めているようだ、と気づいた。ライブラはおっとりとした真面目なひとで、自分から冗談を言うタイプではない。恋愛経験が少な過ぎて、自分の中にあるこんな傾向すら掴んでいなかったことは反省している。
しかし、そのバスの中では私も未練がましくて、シートを少し甘めにつけていたらしい。その後ライブラとアウトレットモールへ行った際、ライブラは「普段はサンドバッグにでもしているのだろうか?」と思うほどバサバサにほつれた手提げのバッグを持参してきた。「バサバサですねバッグ。可哀想なくらいボロボロですね」と言うと、なぜか照れたように「100均で買いました」と言う。清潔感とエチケットの項目は△にしていたのだが、そのとき脳内で2mの筆を使ってシートを×に書き換えてやった。
よく「服装や格好なんていくらでも変えてやれる」というが、実は私もそう思っていた。しかしあまりに直すところが多いと面倒だし、元よりたいして好きな相手ではないのだ。「なぜ私がそんな母親のようなことを細々としてやらないといけないんだ」とイライラしてしまう。ライブラは私よりも8歳も年上だったので、ろくに自分の身なりを整えられない幼稚さが、余計に腹立たしかったのかもしれない。
そのバサバサバッグの件があった日のうちに、「もう会いたくない」という旨をライブラに伝えた。
ちなみにライブラのほうは、意外にも私と会うのが楽しかったらしい。「最後に1回だけ会ってほしい」と頼まれていたのだが、約束の前日に「今更ミチルさんに会うのが怖くなってしまいました。ありがとうございました、お元気で」というようなLINEが届き、私たちのお付き合いは終了となった。
こうして私は無事再スタートを切ることができたのだが、最終的に私のほうが振られた感じになっているのが少し引っかかる。